あなたしかいないでしょ
ほら、ワタシの隣の部屋の、
変わったオバサンの話なんだけど、
やっぱオカシイわ。あの人。
イ カ レ ポ ン チ だ ね ☆
この間の金曜日、
お友達と飲んでボーリングをして、終電で帰ってきたのね。
金曜の夜の終電ってさ、異常なくらい混むじゃん。
電車も遅れがちだし、
溢れかえる人で熱気ムンムンだし、
やっぱタクシーで帰ろうかと思ったけど、
もはや引き返せないほどの混雑ブリ。
お願いだから、週末の中央線だけは、
24時間運転して欲しい感じ。
車内で、激ブス男子に密着され、
何度も窓に押し付けられそうになりながらも、
必死に体勢を保っていたの。
その激ブス男子ってば、
太った”みうらじゅん”って感じで、
変なサングラスをかけたロンゲ男子なんだけど、
ゲルマニウム温浴でもしているのか、
すっごい量の汗をかいてて、
その上、タンクトップしか着てないから、
ワタシのTシャツで吸収される、
おびただしい量の、汗。
ほんと、
”水取りぞうさん”のゲルを振りかけてあげたかったわ。
”ブス男子はタンクトップ着るな!!”
”肌をさらすな!!”
中野駅に着くまで、
学生運動のような感じで、そういったスローガンをひとしきり唱え、
やっとのことで電車から、滝汗男子から解放されたワタシ。
もうさー、ちょっとした戦いを終えたわけで、
すっかりオナカが空いてしまって、
家に入る前に、コンビニに寄ろうとしたの。
そしたら!!
「○○さん!」
と、後ろからワタシの苗字を呼びかける女性の声。
振り返ってみると、
例のお隣のオバサンなわけよ。
「あなた家はこっちよ」
と、ご丁寧に指差して、
ワタシの部屋を指差して教えてくれるんだけど、
そんなこと知ってるわよ。
ワタシは、コンビニで食べ物を買いたいの。
「あー、知ってますよ。
ちょっとコンビニに行くので。それじゃ。」
と、オナカが空いて疲れていたこともあり、
早々に切り上げにかかるワタシ。
てか、立ち話もなんだし、
早く涼しいコンビニに入りたかったのよ。
でも、
あのオバサンがそんなこと許すはずもなく、
「ねね、ちょっとちょっと!!
あなた英語しゃべる??車運転してる??」
と、イキナリ、意味不明なクエスチョン。
英語??ハァ??
たまに部屋でマライアキャリーとか歌ってるけど、
ワタシの妖精のような歌声が漏れてた??
てか、車って??
この間運転して死にそうになったりもしたけど、
ウチの付近で運転したことはないし、ナニゴト??
というわけで、
「いっさい心当たりがありませんけど、何かあったんですか??」
と、キッパリ否定した上で、
興味本位で、仕方なく、
何かまた事件でもあったのかと聞いてみたのね。
そしたら、
ワタシの問いかけは一切無視で、
「この間も玄関の鍵を壊され、新しいのに交換したのよ。
今回だって5万円もかかったんだから。3万は保険でおりたけど。
中にもスライド式の鍵を追加したし、これで誰かが部屋に入った形跡があれば、
あとは天井しかないわ。あなたしかいないわよ。」
”あとは天井しかない”
”あなたしかいない”
って、あんた。
まだそんなコト言ってるの??
このクソババア。
ワタシ、自分が疑われることに腹が立つよりも、
”天井を伝って部屋に侵入する”ってことをマジメに語る、
このオババに恐怖を感じ、
ダメ!刺激しちゃダメ!
この人は病気なんだ!
認知症になるには少し若いけど、
そういう精神的な病気なんだ!!
と思うことに。
「そうですか。
では、何かあったら警察を呼んでみてくださいね☆」
と、そろそろホンキでコンビニに行こうとするワタシ。
去り際、
まだ話し足りないのか、
「わたしね、暴力団ともめてて、よく怒鳴り声上げてるけど、
ごめんなさいね。」
と、神妙な顔つきで語りだす隣人オババ。
背後の自販機の光が、逆光みたくなってて、怖い。
暴力団ともめるって、あなたいったい何をしたの??
借金とかそういう類??
でも、ほんといい加減コンビニに行きたかったし、
どうせ質問をしてもムダだって、思い知らされてたので、
「そうですか。がんばってください。」
と、
たいしてがんばって欲しくもないけど、
どうせなら、がんばらずにさっさと引越しして欲しいくらいだけど、
社交辞令で言っておきました。
最後に、
「あなた、こんな時間にどこから帰ってきたの?サイゼリア?」
(注:サイゼリア=深夜までやってるイタリア系ファミレス)
と、怪訝な顔で聞かれたけど、
終電云々の話をするのも面倒なので、
適当にうなずいてサヨナラをしました。
てか、逆にワタシが聞きたかったわ。
「あなたこそ、こんな時間にどこに出かけるの?」
って。
あは☆