キャットウーマン??
その日の業務が終了し、
そろそろ帰ろうかと、仕事中は外していたアクセサリ類を身に付けているところに、
同じフロアの女子社員がこっそり、ワタシに、近づいてきたの。
オマエはクノイチか?ってくらい、素早い身のこなしで。
日本にもまだ忍者がいるのね?
なんて思うわけもなく、
やだ、ちょっと、こそこそやってきちゃって、なんなの?
あなた、先月結婚したっていう相手のノロケ話を、
まだ話し足りないの??
仕方なく、
一応、もう帰るところなんですワタシ、的なオーラを出しつつも、
何か用?
めいた感じの顔でその女子に目をやると、
「昨日の夕方、中野駅に居ませんでした?」
と、唐突にクエスチョン。
え?昨日はお休みで、近所の中野駅周辺に居たけど、
それが何か?
「ワタシ見ちゃったんです。なんだかいつもと様子が違ったので、もしかしたら別人かもですけど。」
と、彼女。
そんなこと言われたら気になるじゃん。
で、何を見たのか聞いてみると、
「坊主の男の子と一緒に並んで歩いてましたよね?最初、雰囲気が違うんでわかりませんでした。」
と、さきほどの”もしかしたら別人”て言葉がどこへ行ったのか、
妙に確信ぶった話し方の彼女。
ま、確かにワタシは中野駅周辺に居ましたよ。
坊主の子と一緒に。
ってか、その子はワタシのカレシ。
男の子って表現がちょっとアレだけど。この際気にしないことにしましょう。
「なんかぁ、2人とも雰囲気似てて兄弟みたいでした。どういう関係なんですか?」
と、さらに矢継ぎ早に問いかける、興味津々な彼女。
てか、兄弟みたいに見えたんなら、それでいいじゃん。
そういうことにしておきましょうよ。
この子ってばいったい、何を聞きたいのかしら?
一応、ワタシにも世間体とかあるし、
会社でキャマバレ(=オカマだとバレること)するつもりは毛頭ないので、
”友達だよ”とお答えし、対応終了。
てゆうか、
そこまで厚かましく聞いてくるんなら、その時声かければいいのに。
というようなことを、
彼女にそれとなく問いただしてみると、
「その時ワタシ、豹柄のパンツとか恥ずかしいカッコで自転車に乗ってたので、無理でした。」
とのこと。
あ、そう。
でも、そうよね、豹柄はまずいよね。
大阪のオバちゃんじゃあるまいし、ネ?
今どき、アユですら穿いてないよ!!!
ということで、
ワタシ、話のホコ先を変えようと、
そんな、知り合いに会っても声をかけられないような格好で出歩くなんて、
女としてなってない旨を、5分ほど言い聞かせ、
話題の中心を、彼女の普段着の方に、シフトチェンジ。
なんでも、その豹柄のスウェットは、
中野のドンキホーテで購入したとのこと。
キャットウーマンのDVDを観てひらめいたらしい。
でも、いくら格好をマネても、
キャットウーマンにはなれないよ!!
てか、あのスウェットは”キャット”じゃなくて”豹”柄だし、
オ フ ィ ス を 機 敏 に 動 く 程 度 が 関 の 山 ☆
ほんとにもう、
あなたってば、引っ越したばかりって言ってた割りに、
すっかり中野を堪能してるじゃない。
もしかして、その、自転車もドンキで?
あら、やっぱりそうなんだ。
え?8900円?お安い。
というような感じで、ドンドンドン、ドンキトーク。
てゆうか、ちょっと話がそれるけど、
中野って、オキャマにとっては恐ろしい街なの。
スーパーに行けば、かなりの確率でツガイのオカマに出くわすし、
コンビニには、キルビルのように寂しいオカマの刺客が潜んでいる、罠。
いつ、どこで、誰に見られてるかわからない。
近くのコンビニにだからと油断し、寝間着めいた格好で出歩いてごらんなさい。
もう、たいへんよ!!
その気の緩みが、命取り。
”飲み屋では気取った格好のくせに、普段はスウェットの寝巻き姿で出歩くブス”
とか、
”あの子普段はメガネっ子で、坂本ちゃんにしか見えなかった”
とか、
あることないこと、負のキーワードをちりばめられて、
10倍は誇張されて噂になってしまいがち。
洗濯物だって、変なのを外に干せないし、
もし、ちょっと油断してエグイ下着を外に干そうものなら、
”純情そうなフリして、ドスケベな下着で男を食いモノにしている”
とか、
そこまで飛躍するか?
ってほど、憶測で話すのが大好きなのが、オキャマの特徴。
ま、でも、いろいろとラクな面も多いから、
オキャマがこぞって暮らしているんだろうけど、
そんな、眠らないオキャマの街、中野。
でも、まぁ、
そんなオキャマ論を、彼女に話すわけにはいかないので、
一般的なレディのたしなみについて、
帰宅するのも忘れて話し合うワタシたち。
で、ふと、
お互いに中野のどの辺に住んでるのかって話になったんだけど、
もう、オドロキ!!
なんと、ワタシと彼女のマンションって、
10メートルも離れていない距離なの。
一応、プライベートなことだからと、
ワタシの部屋の詳しいところはぼやかしておいたけど、
彼女のマンションは、
ワタシも知ってる”新築の瀟洒(しょうしゃ)なマンション”。
やっだ!!
いつまた目撃されるか、わかったもんじゃないわ。
これからは、オキャマの目だけじゃなく、
同僚の目も気にしないといけないじゃない。
んもう!!
てか、思った。
あのオサレマンションに、豹柄パンツは、ないわ。