カツラ☆デビュー 実践編 その2
私の大家は、ぬすんだ傘をゆっくりと広げながら、こちらに歩いてきた。
(第138回直木賞受賞作「私の男」より 一部改変☆)
というのは半分冗談で、ぬすんだかどうかはアレとして(←たぶん盗んでない)、
大家ってば、マンションの廊下にいるくせに、傘をさしてるのね。
え?もしかして雨漏り?
と廊下の床をみるも、ぜんぜんそんな様子はない。
大家ってば、生身の人間には見えない雨が見えているのかも?
と思って、そのまま通り過ぎようとしたのね。なんか怖いし。
そしたら!!
「あなた!」
と、声をかけてくる大家。
しまった。。
カツラをかぶっているせいで不審者だと思われたか??
ドキドキしながら大家の顔を見ると、
「雨が降っているから傘を持って行った方がいいわ」
と、外の方を見やる大家。
そうか。ワタシ、カツラにばかり気を取られていたので
外は雨が降っていることすら気づいていなかった。
危うく、セットしたヘアスタイルが崩れるところだったわ!!
ということで、玄関に戻って傘を取り、
大家からの”そういえばこんな子いたっけ?”目線を感じつつ
玄関のカギを閉めて、外へ向かおうとしたの。
そしたら!!Part2
「あなた、、○○さん?」
と、ワタシの同居人の名前を出す大家さん。
えー、確かに同居人は髪が長めだけど、ぜんぜん似てないから。
ワタシの方が美少女です!!一緒にしないで!!
ってことで、(適当にうなずいて去ればよかったのに)
「いえ、○△です」と、自分の名字を名乗り、
カツラを外すワタシ。。。
大家ってばそれに驚いたのか、傘を閉じ、
「あぁ、あなた。そうなの。。」と、視線をそらしやがる。
そうなのって、どうなの?
ワタシが髪の毛を気にしてカツラをかぶってると思われてる?
いや、確かに坊主だけど、ワタシ、ハゲてはないのよ。
その違い、すごうく重要なんですけどおー。
てか、これは変装なんですってのも頭おかしい感じだし、
どう言い訳してもアレな気がしたので、そのまま会釈して外へ。
てゆうかワタシ、何やってんだろ。。
部屋に帰りたい、、でも帰ったら負けな気もする。
戻りたい、戻れない、心うらはら☆
で、外。
外はしっとり雨が降ってる感じで。
普段なら傘をささない程度の雨なんだけど、
今日は髪をセットしてるし、不透明なビニール傘をさして歩くワタシ。
てゆうか、ちょっと待って、
なんかコレって、頭髪部分が傘に隠れて世間に見えないし、
カツラをかぶっていてもいなくても変わらないのでは??
これじゃあ、いくら近所を徘徊したところで、
デビューしたことにはならない気がする。
ワタシ、B級アイドルどころか、デビューもできずに消えていった
弱小芸能事務所のアイドル予備軍以下よ。。
そんなのイヤ!!
ワタシはアイドルになるの。
今年は新垣結衣になるって決めたの!!
って、もはや方向性がわからなくなってきたけど、笑
とにかくこの姿を人前にさらさないと、カツラデビューとは言えない気がする。
だからワタシ、向かったわ。駅へ。
そして、傘の要らない電車の中に乗り込むことに。
つづく。